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2025年はどういう年になるか-予想して対応する-

歩く歴史家

全体として大きく変わることはない

年が明けて正月を迎え、日常生活に戻ったと思ったら1月ももう半分が過ぎてしまっていた。こうしてうかうかしているとあっという間に1年は過ぎ去ってしまう。遅きに失した感はあるが、2025年がどのような年になるか、私の独断と薄い根拠でもって予想してみたい。

まず全体を俯瞰すれば、政治・経済・社会あらゆる面において根本的な変化はないだろう。世の中では生成AIブームなどの技術革新による社会の一大刷新に期待する向きもあり、ある出来事(例えばトランプ新大統領の就任)やAI技術が世界を変えるという認識がはびこっている風潮があるが、このようなことは起こらないだろう。

「革新的技術が世界を変える」というような認知様式を私は「逆転満塁ホームランバイアス」と呼んでおり、各種のメディア(Youtuberを含む)はそのようにあおり立てるだろうが(それによって商売が成り立っているため)、実社会で逆転満塁ホームランなどまず起きない。良くも悪くも社会は緩慢にしか変化しないのだ。しかも誰かが計画したとおりに変化することなどまずない。2025年も何かがガラッと変わるというより、近年の傾向が継続することとなるだろう。そして全体は時間をかけて変化していく。

このことを前提に、2025年がどのような年になるかを予想し、対応策を考えて行きたい。

経済:インフレと円安の継続、実質賃金の増加

2022年のウクライナ戦争勃発後は、世界的に激しいインフレが発生した。日本でもインフレがここ数年進んでおり、日本経済は長年苦しめられてきたデフレからインフレに向かう構造転換の最終段階にさしかかったと私は見ている。今年もインフレが継続し、本格的にインフレ経済・社会に突入していくことになるだろう。

円安の傾向も続くだろう。円安の原因については、日米の金利差で説明しようとする「経済情勢派」と10年単位の経常収支から説明しようとする「構造派」の見解が対立しているが、私はどちらかと言えば後者の見方をしている。中長期的なトレンドとしては円安が続くだろう。1ドル100円に戻る時代は来そうにないどころか、130円ですら遠くに行ってしまった感がある。

一点、明るい兆しと言えそうなのは、インフレ経済への本格突入によって、実質賃金がそろそろ上向いてくるころだろう(そう希望したい)。デフレ経済では、いかに労働者の賃金を削り、安価な商品・サービスを大量に供給するかが課題だった。他方、インフレ経済では物価も労働者の賃金も同時に上がっていき、昨年の春闘では賃上げムードが形成された。

賃金の上昇スピードが物価の上昇に追いつかなければ(=実質賃金の減少)、人々の生活は苦しくなっていくわけだが、仮にそうだとしても長期的に見ればデフレ型の縮小経済よりこちらの正常だ。国民は構造転換機の苦しみと思って多少の期間耐えるしかないし、それは仕方ないことだ。

社会:出生数と人口の減少、人間の代替、移民の拡大、格差の拡大

世界の人口は現在約80億人。意外に早く世界の人口増加は終わりを迎えるという予想もあるが、少なくともあと半世紀ほどは世界の総人口は増え続ける。

他方で日本の総人口は2008年をピークに2011年以降14年連続で減少。出生数は2022年に初めて80万人を下回り、2023年は約72.9万人となった。2024年は68.7万人と推計され、わずか2年で70万人を下回ることになりそうだ。この人口減少と少子化トレンドはいつまで続くかわからず、終わりが見える気配すらないため、2025年も縮小するだろう。ただ、長期的にこのまま縮小の一途をたどり続けるかといえば必ずしもそうではなく、いずれどこかのタイミングで横ばい局面に入るだろうと私は予想している。

過去数十年にわたる出生数の減少によって現在の日本は労働力不足に陥っているのだが、足りなくなった労働力を補うための方策として出てくるのがAI活用論と移民受入れ論だ。実際に飲食店では人手が足りずにロボットが代替しているケースが増えてきたが、今後はAI搭載型ロボットが人手不足産業で増えてくることになるのだろう。今年もその流れに棹さす1年となるはずだ。

また、移民の受け入れも同時に進んでいくだろう。自民党は移民を忌避する支持者がいることから「移民」という名称は使わず、「特定技能実習生」という単語で実態を糊塗してきたわけだが、今年も「移民」の受け入れはなし崩し的に拡大していくだろう。長期的には東アジアや東南アジアのみならず、アラブ圏やアフリカ諸国からの移民が流入する事態もありえる(詳細はこちらの記事を参照「移民はもうアフリカ人しかいない」)。

経済格差が拡大していく傾向も続くだろう。金融資産保有者と非保有者の差が拡大し、かつての中間層が下の方に落ちていくと同時に富裕層はさらに金融資産を増やしていくというマクロトレンドはそう簡単には変わりそうにない。

社会の中間層が下の方にずり落ちていくのは先進国に共通の現象で、中間層は不安と怒りを抱えている。これがヨーロッパでのいわゆる「極右」の台頭やトランプの(再)登場の背景をなしているわけだが、これは数十年かけて形成された構造なので、転換するにしても数十年はかかるだろう。私は、現在の世界はその転換局面の途中に位置していると捉えている。

国際政治:中国の下降、米中対立、ウクライナ情勢

東アジアの情勢に関しては、こちら(中国は社会の活力を失いながらも共産党体制はずっと続いていく)でも述べたように中国国内は長期的には縮小傾向にあり、現在が国力のピークであるというのが私の見方だ。日本企業はこれまでの中国経済の成長から多大な恩恵を受けてきたが、そろそろ「店じまい」に向けたシナリオを念頭におき始めたほうがいい段階だろう。

やや逆説的に思われるかもしれないが、今後の中国はダウントレンドに入るからこそ、拡大局面で持てていた精神的余裕を失い攻撃的な態度に出る可能性が高まっていく。それに伴って東アジアでの緊張度が増していくことになるだろう。

トランプ政権は、中国を最大のライバルと捉えており、その伸張に優先的に対処することになるはずだ。それに付随して日本にはトランプ政権からは防衛費増強圧力がかかり続け、日本はそれにつられてか自主的にか、あるいは両方によってか、防衛力強化の議論は加速していくだろう。

ウクライナ情勢に関しては、トランプ政権の発足によってウクライナにとって好ましい形で事態の収拾に向かっていってほしいというのが私の希望だが、ウクライナ・ロシア双方がそう簡単に停戦に合意するとも思えない。侵攻の開始から間もなく3年が経過することになり、双方ともに国力が疲弊しているため、戦闘レベルでの烈度の低下は見られるかもしれないが、政治レベルでの妥協的解決に達するのは容易ではないだろう。

日本の政治:夏の参議院選挙は自民党が敗北し、政権交代が話題になり始める

コロナウイルスの発生とウクライナ戦争勃発後の世界において、選挙がまともに行われている民主政国家では近年おしなべて与党・現職が負ける傾向にあり、日本でも昨年の衆議院選挙で自民・公明の与党は議席を大きく減らし少数与党となった。

今年の7月に予定される参議院選挙では、改選125議席(うち自民・公明で69議席保有)のうち自民党・公明党で50議席を死守できるかがポイントになる。既存の政党がアウトサイダーから攻撃され、勢力を弱めていくというのは世界的な傾向であるため、自民・公明もこの流れに抵抗するのは難しく、昨年の衆議院選挙に引き続き、両党にとって厳しい結果になるだろう。

ここでは、夏の参議院選挙で自民・公明が50議席を割る(=負ける)と予想しておく。そして次期衆議院選での政権交代に向けた議論が高まりを見せるだろう。

では、どうすればいいか

インフレマインドへの転換

ようやくインフレが本格化してきた感のある日本で個人に必要なことは、ここ20~30年のデフレ経済下でのマインドからインフレマインドに切り替えることだろう。客観的な経済情勢が転換を迎えつつあるため、国民はそれに応じて主観を転換させる必要がある。

より具体的に、物価が上がるということは相対的に貨幣の価値が下がるということなので、これまでのように現金を貯め込むと損することになる。したがって、現金は別のものに早く替えてしまうのが合理的な態度だ。例えば、ものやサービスを消費する(=ものや体験に替える)、インフレに強い資産(株式や不動産など)を買うなど。

すでにデフレ経済下で長い時間が経過しているため、今の20代30代はインフレ経済がどのようなものかイメージしづらいが、インフレ経済は一面では大変ではるものの楽しくもある。メディアでは生活苦が注目され、現に多くの国民(特に年金生活者)の生活は厳しいのだが、大局的には悲観的になる必要はない。

インフレ経済を想像するにあたって私の暮らすインフレの激しいアフリカの具体例を挙げれば、3年前に50万円で買った中古車(大衆車)が現在60万円で売れたりする。なにもフェラーリやランボルギーニのようなスーパーカーではない。トヨタの大衆車の話である。こんなに「うれしい」ことは日本ではまずありえないだろう。また、都市部での家賃や不動産の値上がりも激しい。このようにインフレ経済では、資産性のあるものだと目利きのできるプロでなくても儲けるチャンスがある。

このような極端なことが日本で実現するわけではないが、これに近いことは起きるだろう。インフレ経済への対応は、まずしみったれたデフレ根性を捨てることから始まる。そして、個人の否応無しの意識の転換によって、経済全体が上昇基調に入ることが期待される。

10代、20代はこの絶好のチャンスを活かす

人口減少や少子化のトレンドは、一国全体で見れば景気のいい話ではないが、特定の人にとってはチャンスだ。それは若年層だ。この世の中は希少なものほど価値があるため、人口減少社会では数が減りゆく若者ほど有利な立場に置かれる。

現在の20代以下の人、より広く捉えれば30代の人は、団塊ジュニア世代(現在の50代前半)に比べれば世代的にはるかに恵まれている。賃金は上昇していく上、職探しに困らない。この好機を活かさない手はない。

同世代のライバルとの競争をしなくてよく、好きなことをしたり特技を磨いたりする時間的・精神的余裕がある。さらにそうすれば社会での希少価値が高まりさらなる賃金のアップが期待できる。客観的な経済情勢はそう明るいものではないが、団塊ジュニア世代に比べると人生はかなりイージーモードだろう。

逆に高齢者にとっては厳しい社会だろう。なにせ数が多すぎて昔は集められていた社会的敬意と威厳が微塵も与えられないのだから。それを望むなら人口が若い社会に移住することを勧める。そうすれば年を取っているというだけでそれなりの敬意が払われる。

過去に蓄えた知識や技能を持つ人は、下からの突き上げ圧力が弱いため、人手不足社会での戦力として活躍し続けられる。この意味でハイスキル高齢者にとってもいい社会だろう。これといったスキルのない高齢者は年金の改悪により好むか好まざるかによらず労働を続けることになり、昔は若者が担っていたような仕事を代替する(せざるをえない)ことになるだろう。この傾向も当面は変わらない。

プロフィール
歩く歴史家
歩く歴史家
1980年代生まれ。海外在住。読書家、旅行家。歴史家を自認。
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