日本の主要政党にキャッチコピーを付ける(1/2)―与党編―
投票するときの指針
私自身は、日本についても世界各国についても政局に興味がない。A党B派閥の誰とC派閥の誰が犬猿の仲で…や、D党党首とE党党首が連立協議をして誰を大臣ポストに就けるか裏で合意して云々など、本質的な問題ではないと考えている。どういう経緯でその政党が誕生し、どういう政党に誰がいて、どの党とどの党がうまくいっている/仲が悪いといったことはほとんど把握していない。これを追い続けるのは「永遠に続くもぐらたたき」のようで虚無感を覚えるのだ。
しかし、少なくとも選挙のときくらいは、どの政党に投票すればよいか(すべきでないか)知りたい。あわよくば日常から応援できる政党があればいいとも思う。だが、それがないのだ。自分の選挙区の候補者の政策パンフレットに目を通してみるものの、これがまた全然おもしろくない。どの候補者も、判を押したように同じような空虚な政策項目が列挙してあるだけだ。
そこで表面的な主張は脇に置き、私は傍から眺めつつ日本の主要政党の本質を見定めようとしてきた。この記事(前後編)では、そうして見極めた特徴を基に各政党にキャッチコピーを付け、投票する際のひとつの指針を提供したい。まずは現在の与党から。
もちろんこのキャッチコピーは私の独断によるものであり、メディアから受けた偏見を含んでいる。むしろそれを濃縮・拡張表現したものであることをあらかじめ断っておきたい。
自民党=「やってる感醸成党」
2012年に民主党政権が崩壊し、自民党が政権に復帰した。それから安倍晋三元首相、菅義偉前首相、岸田文雄現首相と続いてきたが、政権復帰してからの自民党の至上命題は、「政権の維持」。もう二度と野党に戻りたくない。
この党の支持母体の一つは、既得権を守りたい業界団体だ。相対的に大きな固定票・組織票をベースに、それ以外の投票率を下げれば政権は維持できる。
しかし、バブル崩壊以後の日本は、30年間経済成長はしない上にアジア諸国からの追い上げをくらい、衰退途上国と揶揄されるようにもなった(その期間のほとんどは自民党政権)。国内政治的には相対的に盤石だが、国際的な位置づけとなると政権にあぐらをかいているだけでは済まされなくなってきた。さらには、国内にも維新の会という既得権打破政党が影響力を増してきた。
そこで、「アベノミクス」という大改革を標榜しているが実質的には大企業(支持母体)に有利な円安誘導政策や、「一億総活躍社会」という電通的キャッチフレーズを掲げつつ、必死に改革を「やってる感」を出してきた。ただし、いくらそれが建前だとしても、言ってしまったからにはやらなければならない。いわゆる「建前の自己拘束性」だ。
そこに自民党のジレンマがある。本気で改革を実施していては既得権支持団体から反発をくらい、みずからの支持基盤を侵食しまう自殺行為となる。他方、沈没しつつある日本を政権政党として放置していてはいるわけにもいかない。抜本的な改革が必要だ。
自民党はそのジレンマの中で、有権者にアピールするため「やってる感」をうまく醸し出さなければならない。放置もできないし、やりすぎてもいけない。うまくバランスをとらなければならない政権政党だ。
しかし、この党の本質は、既得権政党である。戦後の経済成長もバブル崩壊以後も(ほぼ)ずっと政権を握り続けていた政党であり、良くも悪くも現在の「日本の形」に最大の責任を負っている政党である。
公明党=「金魚を引っ張るフン」
公明党の至上命題は「生存」。創価学会とのつながりから、絶えず政教分離の原則に抵触するのではないかとの批判にさらされかねない。そうなれば党の存立基盤が崩されてしまう。実際に、90年代には自民党から創価学会との繋がりを批判されてきた。
その結果、生存するためなら、党是(平和の党)をかなぐりすててでも自民党に抱きつくという生存戦略をとっている。その意味で「金魚のフン」だ。
しかし、ただのフンではない。創価学会という強固な組織票があり、衆院小選挙区では自民党議員を当選させているわけなので、自民党に対して「政権内ロビー活動」を行い、みずからの主張をある程度認めさせる力を持っている。金魚本体が勝って気ままに動けないように一定の縛りをかけようとするフンのような存在だ。場合によっては、主脚逆転し、本体を引っ張るフンにもなりうる。
いずれ金魚のフンは本体から切り離される日が来るのだろうか。自民党が、創価学会を超える安定的組織票を発掘すれば、その条件が整ったことになる。
(後編「野党編」に続く)