G-5YSV44CS49 フランス・パリ弾丸滞在記(1/2)―雑感編―|歩く歴史家 BLOG
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フランス・パリ弾丸滞在記(1/2)―雑感編―

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多様な民族とコミュニケーション

2020年1月に訪問して以来、3年8か月ぶりにパリを訪問した。2泊3日の弾丸日程。

到着時にシャルル・ド・ゴール空港でSIMカードを買ったものの、なぜかネットが繋がらなかったため、SFR(フランスの通信会社)の店舗に1時間ほどかけて行く。店舗に入ると整理券があるわけでもなく、入り口で待っていると、奥の椅子に座って待つよう指示された。

フランスのサービス業にあまり期待はしていなかったため、1時間ぐらい待たされるのではないかと思っていたら、30分ほどで対応窓口に案内された。店員は合計4人いたが、二人はマグレブ系男性、一人は東南アジア系男性、もう一人はアフリカ系の女性だった。私の担当となったのはアフリカ系の女性(20代半ばぐらい)で、愛想はゼロ。

東アジア系の私(大半のヨーロッパ人が思うように彼女もおそらく中国人と思っただろう)がフランス語で話しかけたので、安心したのか親切になった。どういうトラブルが発生していてどう対処すべきか技術的なポイントを丁寧に説明してくれ、無事に問題は解決した。

物事を言語で詳しく説明しようとするのはフランス人の特徴で、ハイコンテクストの日本人からすれば少しくどいように見えるが、携帯ショップの店員構成が表しているようにあらゆる文化圏にルーツを持つ人々が存在する社会であることや観光客が多いパリの事情を考えれば、言語で細部まで説明することが、コミュニケーションを成立させる流儀となっている。

日本でも外国ルーツの住人が増えれば、コンテクスト依存型のコミュニケーションから詳細説明型の方法に変わっていかざるを得ないだろう。「そんなことまで言わないとわからないのか」「こっちの意図をくんで行動しろよ」という考え方が通じない機会が増えていくだろう。グローバル化というのはこういう面倒くささを引き起こす面を持っている。

物価の高さ

フランスを観光していて思うのが何よりも物価の高さだ。残念ながら日本は貧しくなったなと痛感させられる。空港で500mlの水を買うと、2.5ユーロ(現在のレートで約400円)。サンドイッチは7ユーロ(約1,100円)。

2日目にカルナヴァレ美術館のカフェでサンドイッチとビール(250ml)を注文したら、合計で20ユーロ(約3,100円)。空港は治外法権エリア、観光地は外国人向けサービスなので多少割り引いて考える必要があるが、郊外入り口あたりとったホテルの近くのレストランでも、メインディッシュは最低でも15ユーロ(約2,400円)はするし、それに飲み物を付けると22ユーロ(3,500円)ぐらいは平気で飛んでいく。

3,100円(20ユーロ)のランチ

感覚的な比較だが、日本で同格のものを頼めば2,000円弱ぐらいで收まるかなという印象だ。日本の牛丼は500円(約3ユーロ)以下で食べられるが、パリでその値段で買えるものはスナック菓子程度だ。

このような状態になっている原因は、日本で長く続いたデフレと目下の円安だ。30年前の日本経済の全盛期と比べれば、日本人の購買力は明らかに減少している。悲しい現実だ。逆に外国人(先進国だけでなく、中国・東南アジアなどの途上国も)から見れば、日本は途上国に準ずるような安い国に見えているだろう。だから訪日外国人観光客が激増するわけだが、これも悲しい現実だ。安いのに物やサービスの品質が高い日本に人が来たがるのは当然だ。

すでにそうなっているかもしれないし、その傾向は今後加速するかもしれないが、先進国に旅行するのは庶民には高嶺の花となる可能性は大いにある。先進国どころか、発展途上国への旅行も難しくなるかもしれない。これが日本人をとりまく現実だ。

街の汚さは日本と西アフリカの中間

パリで歩道を歩いたり地下鉄に乗ると、日本に比べ不衛生さが目につく。タバコの吸殻や犬のフンが落ちていたり、小便の匂いがしたりする。路上喫煙者はいくらでもいる。地下鉄は中心部の駅を除く駅構内は薄暗く、明らかに危険な感じがし、常に気を張っていないといけない。(私が初めてパリを訪れた2007年(16年前)よりはずっと改善されてはいる。)

パリ側から(さらには私の住むアフリカから)日本を眺めて見ると、異様に清潔に見える。日本では鉄道駅の薄暗さや治安上の不安さを感じることもない。これは日本の良い点で、観光客を引き寄せる一因だ。しかし、私は日本の無菌・滅菌・殺菌・除菌は過度であり、人間社会の本性に反するように感じることもある。

交通事情

真っ先に気づくのは、レンタサイクルの普及がかなり進んでいることだ。いたるところに駐車ステーションがあり、使い勝手がよさそうだ。それよりも画期的なのは、道路上に自転車専用レーンが設けられており、自動車と混ざらないようになっていることだ。イダルゴ・パリ市長のイニシアティブで整備されたようだが、かなりの力技だ。日本でも大規模に自転車専用レーンの整備に挑戦する市長が出てくるといい。

レンタサイクル
自転車レーン
専用レーンを走る自転車

自動車の運転事情に関しては、日本から見ればパリ人の運転はかなり荒く感じる。赤信号の交差点では、急ブレーキを踏むような形で止まるため、横断する歩行者からすると恐怖心を感じる。しかし、パリ市民は何食わぬ顔で渡っている。

歩行者の信号無視は普通だ。車が来ていない場合、赤信号でも渡るのがルールのようでさえある。ドイツ人はそのようなフランス人を見てルールに従えない野蛮な奴らだと言うが、逆にフランス人は、車が来ていないのに赤信号で待つドイツ人を見て臨機応変さが足りないとバカにする。

しかし、西アフリカの交通事情の無秩序さに比べれば、フランスの交通はかなり秩序だっている。アフリカは人口増加と都市化のスピードがあまりにも早く、都市整備が全く追いついていないため、交通ルールはあってないようなもので、リアル・マリオカートさながらの様相を呈している。

車、バス、馬車、バイク、歩行者がごった返しており、交通渋滞がえげつない。交差点ではクラクションが鳴り響く、バイクと車の運転手が怒鳴り合いをする、歩行者の腕に車のミラーがぶつかるなど、喧騒を極めている。私の先日車を運転している最中に、バイクがドンと追突してき、運転手はヘラヘラ笑いながら逃げていった(特に傷はついていなかった)。

アフリカの交差点
アフリカの歩道
雨季の冠水した道路と大渋滞

それに比べれば、パリの交通事情は秩序だっている。日本よりは運転が荒いが、なにせ先進国である。フランス人がいくらルールを破ることに誇りを感じているからといって、それなりの秩序はある。その点、フランスはアフリカよりもはるかに安心していられる。

写真

再建中のノートルダム大聖堂
再建中のノートルダム大聖堂
工事中のオペラ座
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プロフィール
歩く歴史家
歩く歴史家
1980年代生まれ。海外在住。読書家、旅行家。歴史家を自認。
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