G-5YSV44CS49 朝鮮半島南北統一後は韓国の高齢者が切り捨てられる―韓国の急すぎる人口減少―|歩く歴史家 BLOG

朝鮮半島南北統一後は韓国の高齢者が切り捨てられる―韓国の急すぎる人口減少―

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韓国に押し寄せる怒涛の人口の波

韓国と日本の人口グラフを見ていただきたい。1950年から2100年までの150年間のグラフだが、山の傾斜の違いが一目瞭然だろう。

日本は1930年ごろから2010年までの約80年間で2倍になり、総人口のピークに達した。そこから90年かけて半減し元に戻る。一方、韓国では、1960年から2020年までの約60年間で2倍になり、総人口のピークに達した。その後80年で半減する。

つまり、人口が倍増しピークに達し、元に戻るのを1サイクルと考えると、日本は約170年、韓国は約140年でそのサイクルを経験する。

1950年から2100年の生産年齢人口を切り取ると、日本は1950年から1990年の40年間で1.7倍になり、約70年後に元に戻る。一方、韓国は、1950年から2020年の60年で3.7倍にもなり、そこから80年で元に戻る。

日本の場合は、山が2つ(団塊の世代と団塊ジュニア)があるのに比べ、韓国はベビーブーム世代の出生率が低いため山が小さい。自分は6人兄弟だが子どもはゼロという60代、自分の両親は6人兄弟だが、自分は一人っ子と30代の人も珍しくないだろう。

こちらの日本韓国の人口構造の変化を見ればはっきりと確認できるが、韓国は日本に比べ人口の波が怒涛のように押し寄せ、過ぎ去っていく。出生率の低下スピードも著しく早い。日本の場合は、山が2つ(団塊の世代と団塊ジュニア)があるのに比べ、韓国はベビーブーム世代の出生率が低いため山が小さい。自分は6人兄弟だが子どもはゼロという60代、自分の両親は6人兄弟だが、自分は一人っ子と30代の人も珍しくないだろう。

脱植民地化から軍政を経て民主化に至るまでの政体の変化の早さから韓国は「圧縮近代」と言われるが、人口動態にもそれが当てはまる。あまりにも急激な変化だ。これからの韓国は、日本が経験した過去を早送りで経験することになる。日本の少子高齢化もかなり深刻だが、韓国のそれは絶望的レベルだ。

今後の韓国の問題

真っ先に考えられそうな問題点は、社会保障だ。これだけ急に生産年齢人口が減り高齢者が増えれば、現役世代の負担が増える。高齢化率の上昇スピードもとてつもなく早い。社会保険料負担が急増するのも、高齢者の貧困率が高いのも当然だ。今の韓国は支える現役層も支えられる高齢者層もどちらも苦しい社会だろうが、今後もその傾向は加速するだろう。

経済面に関しては、90年代以降の著しい経済成長を支えてきたのは、1970年以前に大量に生まれた世代だ。しかし、1970年にピークに達した若年人口(0~14歳)は、急速に減少している。グローバル企業は優秀な人材を確保し続けられるだろうが、国内の足元の活気は失われていくだろう。

北朝鮮との人口比較

(単位:千人)1950年1990年2023年2050年2100年
1 韓国20,10444,12051,78445,77124,103
2 北朝鮮11,10320,80026,16125,80720,474
比率(1÷2)1.812.121.981.771.18
韓国と北朝鮮の総人口比較

詳細はこちら(韓国北朝鮮)を参照いただきたが、2023年現在、韓国の総人口と生産年齢人口は北朝鮮の約2倍であるが、2100年にはそれぞれ1.2倍、0.98倍となりほぼ同水準となる。単純に人口面だけを見れば、韓国の優位性はなくなっていく。

南北統一は韓国の問題をより深刻化させる

1948年に大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国が建国されてからすでに75年経過しており、統一国家時代を知る人が減っていく中、南北統一に関連する課題は減るどころか増えている。

例えば、同じ民族に属しているというアイデンティティが薄れつつあり統一国家を維持できるのかという問題、統一後の政治体制問題、核兵器の管理問題、南に流入する難民問題、発展の著しく遅れた北の社会経済インフラの整備問題。

統一後のシナリオとしては、①韓国が北朝鮮を徐々に併合すシナリオ(南北の著しい国力差を考えればその逆はありえないだろう)と②一国二制度の国家連合の形式を採用するシナリオが考えられる。前者を想定する場合、北朝鮮の貧弱な経済構造ゆえにその生産年齢人口は、問題解決のためのコスト負担者たる納税者としては想定できない。むしろ、(少なくとも統一直後の一定期間は)支援を受ける従属人口と考えるべきだ。

今後、韓国の若年人口と生産年齢人口は減り続け、高齢者人口が右肩上がりに増加することは確実なので、それに加えて北朝鮮人を手当てしている余裕はない。たとえ併合期間を長く延ばしたとしても、構造は変わらないため韓国側に負担がのしかかり続けることには変わりない。

それでも統一しようとすれば、韓国国民全体がコスト負担するしかないのだが、その過程で真っ先に犠牲になるのは韓国の高齢者だろう。老齢年金の支給が切り詰められ、医療費負担が増える。現在でさえ高い高齢者貧困率がさらに高まった結果、彼らは街を徘徊するようになる。その裏で、勤労世代は重すぎる税負担に苦しむこととなるだろう。この事態は少なくとも2100年までは変わらない。

はたして韓国はこれに耐えられるだろうか。韓国の民族意識が高く、北朝鮮人民をいかなる犠牲を払ってでも救済すべき同胞と認識していれば、この痛みに耐えられるだろうが、私の目にはそれは現実的には見えない。

わずかながらではあるが韓国が北朝鮮を併合するチャンスが今よりもあったとすれば、韓国が1997年にIMF支援国家になって以後、経済が回復軌道に乗り始めた2000年代だっただろう。今後仮に統合が実現すると、統合のコスト負担に耐えられなくなった朝鮮半島は、中国とアメリカ陣営の草刈り場となり、そこにロシアが介入し、東アジア地域が不安定化することになる。朝鮮半島の統一は、実現の可能性が日に日に薄くなっている。

プロフィール
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歩く歴史家
1980年代生まれ。海外在住。読書家、旅行家。歴史家を自認。
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