G-5YSV44CS49 世界の人口減少国家②-これからの衰退途上国:中国、韓国、北朝鮮、台湾-|歩く歴史家 BLOG

世界の人口減少国家②-これからの衰退途上国:中国、韓国、北朝鮮、台湾-

歩く歴史家

日本の後を追う国々

前稿に続き、人口が減少していく国は社会経済的な活力を失っていくだろうとの想定から「衰退途上国」とみなしておく。前稿では、日本に加えて旧ソ連圏の一部、旧ユーゴスラビア圏、南欧の国々が人口減少フェーズに突入していることを確認したが、今回は現在総人口がピークを迎え、これから減少に転じる国々を見ていく。

なお、「現在総人口のピークを迎えている国」の時間幅は少し広めにとり、2020年から2030年ごろまでを想定する。日本の総人口のピークが2008年であるため、これらの国々は約10~20年遅れで日本を追いかけてくることとなる。

これからの衰退途上国

現在すでにピークを迎え、これから人口が減っていく衰退途上国の一覧は次のとおりだ。

中国韓国北朝鮮台湾タイスペインドイツポーランドスロバキアなど

これらの国々をピーク時から2100年にかけての減少スピードを加味して3つのグループに分けるとこのようになる。

1 ピーク時から40%以上減少する国(激しい減少)

中国(中位推計で約46%、低位推計約66%)

韓国(中位推計で約53%、低位推計約70%)

ポーランド(中位推計で約44%)

【参考】日本(中位推計約43%、低位推計約61%)

2 ピーク時から20~40%減少する国(相対的に緩やかな減少)

台湾(中位推計で約37%、低位推計約57%)

北朝鮮(中位推計で約23%、低位推計約51%)

タイ(中位推計で約38%、低位推計約60%)

スペイン(中位推計で約35%、低位推計約56%)

スロバキア(中位推計で約33%、低位推計約57%)

3 ピーク時から20%以下の減少に収まる国(緩やかな減少)

ドイツ(中位推計で約17%、低位推計約42%)

各論

韓国

何よりも目につくのが韓国の減少があまりに速いことだ。韓国統計庁は今年2月28日、2023年の合計特殊出生率が0.72だったことを公表し、地球から最初に事前消滅する国と評される。日本より速いペースで沈んでいく中で必死に生存競争をしなければならないため、異様なまでの教育熱と受験競争が展開され、それが少子化を引き起こすという悪循環に入り込んでいるのだろう。

北朝鮮

私はこちらで韓国と北朝鮮の南北統一が仮に達成されたとしても、韓国側は統一後の負担に耐えきれないだろうとの見方を示した。対する北朝鮮も緩やかに人口が減少していく。北朝鮮の現在の人口構造は、1990年代半ばの日本のそれと同じであり、生産年齢人口はすでにピークに達し、高齢者人口が激増している最中にある。

北朝鮮のような軍事国家で、かつ高齢化が進行し労働者が減っていく社会において、誰が高齢者を支えるのかという問題が浮上する。私は北朝鮮の政策に精通しているわけではないが、まともな社会保障制度が整備されており老齢年金を出せる財源が捻出できているとは到底思えない。今後、金王朝は貴重な財源を軍事費に充てるか、社会保障費に充てるかの選択を迫られることになるが、現在の動きを見る限り後者に充てることはないだろう。

そうして、今後も金王朝は中国を後ろ盾として存続し、国内では大量の高齢者が切り捨てられていくだろう。

中国

中国に関してはすでにこちらで詳しく書いた。今後の中国は政治、経済、社会の活力を失うが、中国共産党体制は長期間続くだろうというのが私の予想だ。

台湾

台湾も他の東アジア諸国と同じく少子高齢化が進んでいる真っ只中である。日本の90年代後半から2000年あたり(日本の社会経済的ピークの時期)の人口構造に似通っている。当然台湾もこの事実を把握しているだろうが、日本の例からすれば、これから活力を失い始めることとなる。そうならないかもしれない。

ドイツ

西ヨーロッパの中で人口減少スピードが速いのはドイツだ。しかし、東アジア諸国と比較すれば、そのスピードは格段に遅い。ドイツは2023年のGDPで日本を抜き世界3位になったわけだが、日本が現実的に目標にすべきはドイツの人口動態だろう。ここ20年間での若年人口の減りは少なく(それでも減ってはいる)、日本も今後うまく少子化対策を行えば、ドイツぐらいにはなれる可能性は残されているだろう。

東アジアから日本を照らしてみる

東アジアの全体を見渡してみると、人口減少が叫ばれる日本はまだましに見えてくる。とはいえ全体で沈んでいっているわけなので、こう言ったところで気休めにしかならないのだが。東アジアで今後、人口が減少していくにもかかわらず社会経済的に隆盛を極めるような事例が出てくるのか見ものである。

現在の出生率については、日本はわずかながら東アジアのトップである。東アジアで真っ先に人口減少社会に突入した日本は、他の国々が注視する参考例であるとともに、見習うべき見本例となっているかもしれない。

そうは言えど、「下には下がいる」式の認識で胸をなでおろすのはみっともないため、日本は人口面でまずドイツを目指すべきだろう。

プロフィール
歩く歴史家
歩く歴史家
1980年代生まれ。海外在住。読書家、旅行家。歴史家を自認。
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