世界の人口減少国家①-現在の衰退途上国-
衰退途上国・日本
近年、日本社会では「出生数が過去最低を記録した」、「高齢化が激しくて年金や医療制度が崩壊する」、「老後資金に2千万円必要だ」など悲観的な論調に拍車がかかってきたように感じる。高齢化に関しては、こちらの日本の人口動態を見ていただければわかるが、確かにそのとおりで、あと20年ほど高齢者の増加は続きそこでピークを打つことが(ほぼ)確定している。
少子化についても、もはや手遅れと言ってよく、最近政府が慌てふためいて対策を講じ始めたが、仮にそれが奏功したとしてもせいぜい出生数が横ばいになり、総人口の減少ペースが緩やかになるぐらいまでしか期待できない。
将来の人口動態は、GDPや株価などと違ってかなりの精度で予想ができる。現在の人口構造はすでに団塊ジュニア世代が生まれ終わったたぐらいの1970年代半ば~後半ぐらいで予想できたため、早く対策を打つことは可能だった。しかし、民主制国家では人口ボリュームの大きな世代の利益を最優先して政策決定される(こちらを参照)ため。少子化対策はずっと先延ばしにされ、現在いよいよのっぴきならない状況まで来てしまった。
では、世界には日本のように人口がすでに減り始めている国はあるのだろうか。答えは、いくつもある。では、どこだろうか。
すでに総人口が減っている代表国
過去に総人口のピークを迎え、2024年現在すでに人口が減り始めている国を列挙すると次のとおりだ。
日本、ロシア、ウクライナ、ベラルーシ、ハンガリー、ブルガリア、ルーマニア、セルビア、クロアチア、イタリア、ポルトガル、ギリシャなど
これらをカテゴリー分けすると、このようになるだろう(別の分け方もあり得る)。
・旧ソ連圏:ロシア、ウクライナ、ベラルーシ、ハンガリー、ブルガリア、ルーマニア
・旧ユーゴスラビア圏:セルビア、クロアチア
・南欧:イタリア、ポルトガル、ギリシャ
・その他:日本
私の印象論と希望
全体を見ての私の印象だが、なんとも中途半端な国々だ。日常生活でこれらの国々の製品を目にすることはほぼないだろう。イタリアの高級服飾ブランドくらいだろうか。イタリア、ギリシャ、クロアチアは観光客を多く集めているが、経済指標では前面に出てくることはない。今後ぐんぐん伸びてくるような期待感は抱かせてくれないし、なんとなく暗い感じがする。これらの国々で活気があるとみなせるような国はないため、「衰退途上国」とみなしておこう。
ロシアがウクライナに侵攻した一因には人口構造があるということをこちらで述べた。これらの衰退途上国が人口減少プロセスにどう対処するかは興味深いテーマだ。プーチン・ロシアのように戦争に打って出ることで衰退からの一発逆転ホームランを目指す国が再び現れるのか、なすすべなく衰退していくのか、はたまた何らかのきっかけで復活するのか。
「世界でもっとも成功した社会主義国」と皮肉を込めて評された日本が、本物の旧社会主義国と同じカテゴリーに入っているという事実は示唆的だ。この皮肉は真実だったということになる。日本に生まれ育ち、「国際協調的ナショナリスト」を自称する私も、日本が衰退していく事態を嘆いている一人だ。2050年頃まで高齢化が進み少子化にも歯止めがかかりそうもないことに鑑みると、自分が現役世代であるうちに事態が好転することは期待すべくもなさそうだが、その先にはもっといい社会経済の状態になっていることを願いたい。