【将来予想】次の国連事務総長はセネガルのマッキー・サル大統領
国連事務総長
ここでは2026年末に任期を終えるアントニオ・グテレス現国連事務総長の後任が誰になるか予想してみたい。
まず、前提知識を共有するため、1980年代からの国連事務総長の出身国・地域と在任期間を示しておこう。
・ハビエル・フェリペ・リカルド・ペレス・デ・クエヤル
(南米・ペルー、在任期間:1982年1月1日~1991年12月31日)
・ブトロス・ブトロス=ガーリ
(中東・エジプト、在任期間:1992年1月1日~1996年12月31日)
・コフィー・アナン
(アフリカ・ガーナ、在任期間:1997年1月1日~2006年12月31日)
・パン・ギムン
(アジア・韓国、在任期間:2007年1月1日~2016年12月31日)
・アントニオ・グテレス
(ヨーロッパ・ポルトガル、在任期間:2017年1月1日~2026年12月31日予定)
まとめると、南米10年→中東5年→アフリカ10年→アジア10年→ヨーロッパ10年となる。輪番制が明文化されているわけではないため可能性はゼロとは断定できないが、地域バランスを考えるとアジアとヨーロッパが候補になる可能性は少ない。残るはアフリカ、中南米、中東だ。
サル大統領が有力な理由
そこで私が次期国連事務総長の最有力と考えるのが、西アフリカ・フランス語圏のセネガル共和国の現大統領マッキー・サルだ。
マッキー・サル(1961年生まれ、大統領在任期間:2012年4月3日~2024年4月予定)
(セネガルの大統領の名前はサル、国防大臣の名前はカバ!)
国連事務総長(任期5年)は、国連憲章により、国連事務総長は安全保障理事会の勧告を受けて総会によって任命される決まりとなっている。確かに制度上はそうだが、総会で否認された事例はなく今後もその可能性は少ないため、安保理の承認を取り付けた時点で事実上決まりだ。そのためにはアメリカの覚えがめでたいことが前提条件で、それと同時に常任理事国の賛成も取り付けなければならない。
セネガルは、ヨーロッパからの独立以来、一度もクーデタも内戦も経験したことがなく、大統領選挙では平和裏に与野党の政権交代が行われている、サブサハラアフリカの中では稀有な国である。数十年にわたる独裁政権、クーデタによる軍事政権が現在でも跋扈するアフリカの中で、セネガルは西欧・アメリカからは民主的価値に忠実で、「模範的な優等生」とみなされている。
そのセネガルで、2012年の就任以来、サル大統領は民主主義の価値にコミットしつつ欧米諸国に過度に肩入れすることなく、中国・ロシアとも適切に付き合う全方位外交を展開してきた。2022年2月から1年間アフリカ連合(AU)の議長を務め、アメリカの民主主義サミットへの参加、マクロン・フランス大統領との首脳会談のみならず、ロシア・ウクライナ戦争が始まって以降2度プーチン大統領と会談し関係を築いた。さらに中国とは中国・アフリカ協力フォーラム(FOCAC)の共同議長として重要な役割を果たし、習近平国家首席とも何度も会談している。このようにサル大統領はアフリカでは大物政治家となった。
アフリカ諸国では大統領の三選問題(二選までと憲法で規定されているものの、憲法改正を強行し権力の座に長年居座り続ける)が多発しているが、2024年に大統領選挙を控えるサル大統領にも三選が取り沙汰されるようになった。欧米諸国からは「セネガルよ、お前もか」と疑いの目を向けられ、陰に陽に圧力をかけられるようになった。
そうした中、今年6月、サル大統領は三選出馬しないことを名言した。アメリカ大統領は任期満了が近づくにつれて活動量が落ちだんだんとレームダック化していくが、サル大統領は退任確約後も精力的に国連安保理主要国に対して外交活動を展開している。私はこれを国連事務総長就任に向けた足場固めと見ている。
そのサル大統領は2024年4月に大統領を退任した後、2年8か月ほど何らかの名誉職に就きつつ、65歳で国連事務総長に就任し、まずは70歳まで第一期目を全うし、身体的に可能であれば再任され75歳まで続ける。こうすれば政治家人生をきれいな形で終えられる。
安保理常任理事国としても、セネガルのようなアフリカの小国であれば積極的に拒否権を発動する理由はない。彼らにとりセネガルは当たり障りのない国であり、そこの大統領は事務総長には悪くないだろう。
これが私の予想だが、それには前提がある。アメリカの2024年大統領選挙で民主党の候補が勝つことだ。ブリンケン現国務長官が再任されるか外交政策を決定する主要ポストに就くとなおよい(ブリンケン国務長官は、完璧にフランス語を話し、フランス語圏世界に知悉している)。共和党が勝った場合でもサル大統領は特に悪い選択肢ではないが、同大統領が近年固めた足場が揺らいでしまうことになる。
以上が私の将来予想だが、どうなるだろうか。2026年後半には答えがわかるだろう。