【将来予想】日本はあと20年間もがき、2050年から息を吹き返す
沈み続ける日本?
戦後の高度経済成長を経験した後、オイルショックを首尾良く切り抜けた日本は、1980年代後半のバブル景気により世界で栄華を極めたように見えた。1979年にはハーバード大学の偉い教授が『ジャパン・アズ・ナンバーワン』という著作を世に出し、日本の「すばらしさ」を称賛した。
しかし、90年代頭のバブル崩壊以降、日本の経済社会は不調を来すようになった。1997年に日本人の給与はピークに達してからの25年間は横ばいか微減。国内総生産も横ばいか微増。高齢化率は上昇するばかりである。今となってはバブル崩壊からの社会経済的停滞を指して「失われた30年」などと言われる。10年前までは「失われた20年」と言われていたが、それがいつのまにか30年になった。こうして「失われたX年」のXに代入される数字は年々膨らんでいく。
あらゆる国際比較データをとってみても、日本の存在感は下がる一方である。かつては世界1位だった日本の国際競争力はOECD加盟国の下の方。一人あたりのGDPも韓国や台湾に抜かれるのも時間の問題のようだ。これをもって日本は「衰退途上国」と揶揄されたりもするが、明るい話題の乏しい現在の日本のこのダウントレンドは続いていくのだろうか。はたまた上昇に転じる時期がくるのだろうか。
結論的に言えば、この傾向が永続することはないと私は予想している。今後日本に20年遅れて東アジア諸国が「衰退途上国」化していく中で、日本は(ドイツとともに)真っ先に身軽になり2050年ごろに息を吹き返す、とういうのが私の見通しだ。その論拠について見ていこう。
1990年から2050年までの60年間
まずは、グラフを見ながら日本の人口動態を確認したい。(グラフは総務省統計局「国勢調査」と国立社会保障・人口問題研究所(出生・死亡中位)を基に筆者が作成。)
起点を現在の2023年とし、前後のおおよそ30年の高齢者(65歳以上)人口と後期高齢者(75歳以上)の推移を見てみる。まずは、1990年から2023年の30年強に着目すると、それぞれ約1,500万人から3,600万人(240%増)、約600万人から2,000万人(330%増)と急増している。
一方、現在から2050年までの27年間では、それぞれ約3,600万人から約3,900万人(8%増)、約2,000万人から2,400万人(20%増)へと増加するものの、先の30年間の増加スピードに比べれば圧倒的に緩やかである。この事実から、現時点ですでに高齢者(後期高齢者を含む)の人口の伸びは緩やかになっており、すぐ先にピークは見えていると言える。
それとは逆に、生産年齢人口(15~64歳)は過去30年強で約8,600万人から7,400万人と1,200万人減り(14%減)、今後27年で約1,850万人減る(25%減)。 年金・医療・介護などの社会保障制度は、過去30年間で急増し今後も微増する高齢者を急減する生産年齢人口で支える仕組みになっているため、これまで費用負担が重荷となって若年層の肩にのしかかってきたし、今後もその傾向はかわらない。
2050年から
しかし、その傾向が変わるタイミングがある。それがおおよそ2050年ごろだ。2040年には団塊ジュニア世代が高齢者(65歳)になり日本の高齢者人口はピークに達し、それ以降は減少していく。その10年後の2050年に団塊ジュニア世代が後期高齢者(75歳以上)となると、後期高齢者人口はピークに達し、その後、減少の一途を辿っていく
これに伴い、老齢年金の支出額は減り始めるとともに、75歳人口の増減に相関する医療費も2050年から減少し始める。これをもってようやく下の世代の肩にのしかかる重荷が膨れ上がる事態が收まる。(それが軽くなるか、重いままの状態が続くのかは今後どれだけ子どもが誕生するかにかかっているが、さらに重くなる可能性は低い。)
詳細は筆者の世界の人口動態に関するデータ群を参照いただきたいが、世界の中で高齢者人口が減少に転じる国は日本が最初である。2050年の中国はちょうど現在の日本のように高齢者の増加のピークがようやく見えてくる時期であり、インドは激増している真っ最中である。 ここからは筆者の願望であるが、世界に先んじて人口安定化社会に突入する日本は、高齢者負担にあえぐ近隣国を尻目に、総人口が1億人ほどまでにスリム化した状態で息を吹き返し再浮上しし始めることだろう。
息を吹き替えすために
すでに生まれ終えている世代の趨勢を変えることはできないが、未来は変えられる。2050年を一つの目標地点とすれば、そのときの生産年齢人口がどうなるかというのは2023年の現在からどれだけ出生数を増やせるかにかかかっている。
本来であれば、将来人口はほぼ正確に予想でき何十年も前から現在のような人口構造になることはわかっていたため、出生数の増加対策はもっと早く行っていなければならなかった。遅きに失した感は否めず、厳密にはすでに手遅れかもしれないが、20~30年後を見据えた出生数の増加政策に取り組むのは喫緊の課題である。具体策としては勤労世代の所得上昇、子育て環境の改善、教育費の軽減措置などすでに多くの論者によって論じられている出生数の増加に向けた対策が必要となるだろう。
今後日本が息を吹き返すためには、やはり若年人口のボリュームが多くなければならない。過去の日本の経験に照らせば、科学技術や文化・スポーツ・芸能分野で活躍する人物はボリュームゾーンから誕生するためだ。
すでに見たとおり2050年ごろから高齢者負担が減っていくため、2020年~30年ごろ生まれの世代はチャンスである。この世代は、日本社会、さらにはアジアの中で多数を占める高齢者より圧倒的に希少価値が高く、経済的・社会的成功を手にすることが親世代に比べて容易になるはずである。